私がeBayでの販売を始めた15年前に越境ECという表現は存在せず、「海外向けEC」や「海外販売」などと言われていた記憶があり、2012年ごろに経産省が使用したのが最初だと思われる「越境EC」という表現を聞いた時には、大きな違和感があったものです。
それが今や、越境ECという言葉もすっかり定着した感がありますね。
それはさておき、セラーとしてこの越境EC(モール利用)に取り組む場合、「値付けの仕方がよく分からない」、言い方を変えれば「利益率をどのくらいに設定するべきか迷う」、という声を時々耳にします。他のセラーがどの程度利益を取れているのか気になりますよね。
そこで今回の記事では、eBayやLazada、Shopeeで販売している私の経験を元に、それぞれを比較しながら、主に利益率の面からお話できればと。
越境ECの利益率を3パターンで解説
1. eBayの場合
セラー仲間に聞くと、粗利は20%程度というパターンが一番多い印象です。
ちなみに自分の場合、コロナ禍になる前の2015-2019年の間は概ね10%強の利益率で販売していました。
それ以前は20-30%の利益を確保していたものの、このあたりから競合が急激に増えてレッドオーシャン化し、利益が取りにくくなったという背景があります。
10%と言うと、月に300万円の売上があれば、手元に残るのは30万円ということになります。この程度の利益率では、今回のコロナのように突発的に翌月以降の売上が下がると、一気に資金繰りが苦しくなります。
ですので、できるだけ卸してもらえる商品を扱い、その商品の定価くらいの価格で売ることができれば、自動的に20-30%程度の利益が残ります。eBayに限らず国内でも、普通はこのような形式でビジネスが成り立っているかと。
もっとも、繰り返しになりますがeBayでの販売は全体的にレッドオーシャン化しており、たとえ卸価格で仕入れることができても、薄利で売るストアーが現れることもよくありますし、悩ましいところです。
もちろん中古品の販売や、新品でも特別な仕入れルートがある場合などは、それこそ粗利50%以上ということもあるでしょう。セラーを取り巻く環境は年々厳しくなってはいるものの、昔も今もeBayでの販売は夢があっていいなーと、個人的には思います(苦笑)。
2. LazadaとShopeeの場合
まずLazadaについて、日本ではまだ越境ECプラットフォームとしての認知度は低く、eBayがレッドオーシャンなら、こちらはブルーオーシャンと言えるでしょう。
ただし、化粧品やサプリなどの一部商材はすでに日本の競合も多数存在している印象なので、注意が必要です。そうした商材以外は、利益も30%はコンスタントに取れる環境にあると感じ、事実自分も約35%の利益を取れています。
一方、Shopeeの場合はeBayほどではないものの、それに近い感じで既にレッドオーシャン化が進んでいるのではないでしょうか。そのことは、腕時計やおもちゃなどの売れ筋商品を検索するとすぐに分かります。日本人セラーの数はeBayより少ないはずですが、Shopeeは日本語による資料・サポートが充実していて、販売活動がしやすいと率直に思いました。レッドオーシャン化しつつあるのも、理解できます。
こうした状況を踏まえ、自分の場合はShopeeにおいてeBayとは出品ライナップを完全に分けることで、25%の利益は取れるよう価格設定しています。
3. 無在庫販売の場合
特にeBayでは、完全無在庫・大量出品のセラーも多いのではないでしょうか。
自分の周りのセラーは20%の利益率が一番多いと先に述べましたけども、完全無在庫に限って言えば、10%にパーセンテージが下がります。手に入りやすい商材なのですから、価格競争が熾烈を極めるのでしょう。
コロナ禍が続き、ここ2年ほど日本郵便の国際配送が安定せず、アメリカやオーストラリアなど多くの国で、未だに遅延・引受停止が続いています(2022年2月上旬現在)。再開してもすぐにまた止まることがあるので、現状ではDHLやFedExのようなクーリエで送ることになります。そうなると無在庫販売も厳しく、知っているところはどこも売上を下げています。
今回のことで、無在庫販売は危機に弱いと痛感しました。
ebay販売歴15年、そしてLazadaやShopeeでも販売を始めた私が今思うこと
レッドオーシャン化してしまったeBayについて明るい話題があるとすれば、それは「スマホの普及」と「Promoted Listingなどの広告ツール」にあると私は思っています。
eBayも公式に発表しているように、今やPCよりスマホを通じての購入が多く、それはつまり「以前より値段の比較がされにくい状況」にあると考えます。自分がスマホで何か購入する時を考えても、あの小さな画面では、面倒で複数のお店の価格を細かく比較しようとは思いませんし。
そこでPromoted Listingのようなマーケティングツールを積極的に活用し、価格的な優位性は低くとも上位表示される機会を増やすことで、現在は商材は変えずとも毎月コンスタントに20%の利益は取れるようになりました。
単に利益率だけの話をすれば、競合ひしめくeBayでも、しっかり利益を確保しながら売っていく余地はまだ残されていると思っています。
LazadaとShopeeの方は、各論ではなく総論で言うと、現状、eBayより利益が取りやすいと言えるでしょう。ただLazadaもShopeeもeBayとは異なる売れ方の仕組みになっていて、端的に言えば、セール設定やモール側が実施する各種キャンペーンに参加しないと基本的に売れません。
こうしたセールやキャンペーンの種類が色々とあるのが曲者で、あれもこれもとキャンペーンに参加すると、売れたはいいけど赤字になってしまった、ということが起こり得ます。せっかくの粗利30%が、うっかりするとゼロまたはマイナスになる、ある意味恐いプラットフォームだと感じています。
自分もまだまだ試行錯誤中ですけども、その辺のお話は別の記事で改めてご紹介できればと。