ロシアはなぜウクライナに侵攻したんだろう?
台湾有事って何?
島国の日本はこの先大丈夫なのか?
いま話題の地政学。ロシアのウクライナ軍事侵攻により、地政学に興味を持つ人が増えているのでしょう。
かく言う私もその一人で、Amazonで地政学関係の書籍をあれこれ物色していたところ、一つの書籍に目が留まりました。それが今回ご紹介する『13歳からの地政学: カイゾクとの地球儀航海』(田中孝幸 著/東洋経済新報社/2022年)。
「13歳」ということで、子供向けのやさしい内容かと思いきや、実に考えさせられる内容・構成になっており、ここ数年読んだ本の中で一二を争うほど素晴らしい本でした。それこそ学校の教科書に採用しても良いのではないか?と思えるほど感銘を受けましたので、この本の内容について皆さんとシェアできればと。
国の存続・繁栄に立地がいかに重要か、ロシアがウクライナに侵攻した本質的な理由、中国や北朝鮮が軍拡を進める動機というものが、わずか一日で理解できるようになります。
※
まずは、著者の田中孝幸さんのご紹介から。
・オーストリア、ウィーン在住
・国際政治記者。モスクワ特派員など歴任し、世界40ヵ国以上で幅広く取材。
・ネコ好き
意外にも、私自身といくつか共通点がありまして、まず名字が同じ(苦笑)。そして「ネコ好き」という点です。我が家の猫は16歳で腎機能が低下しているものの、何年経っても本当にかわいい☆
それはともかくとして…
・国際社会の中で国が力を持ち続けるための条件
・ロシアによるウクライナ侵攻、台湾有事に共通する点
・アフリカが今なお貧しい理由
『13歳からの地政学』の学びと要点
海を制する国は強い
・世界中の貿易は9割以上が海を通っている。
↓その理由
厳しい気候の国々が多く交通の便が悪いこと。さらに国をまたいで移送することになるので、先々で税金がかかり、さらにはそうした手続きによりスケジュールに遅れが出る可能性もあるため。
・核兵器はただ持っているだけでは意味がない。いつまでも潜っていられる原子力潜水艦、海の中からミサイルを発射する能力、それに潜水艦を隠すための深く、自分の縄張りにできる安全な海という3つを確保できてはじめて最強のアイテムになる。
・中国は原子力潜水艦を隠す場所を探している。なので南シナ海がいつも話題になる。言い換えると、中国はごちゃごちゃ干渉してくるアメリカを黙らせ、対等の立場になるためにミサイルを隠せる海を手に入れたい。
・世界のほとんどのデータは海底を経由している。ゆえに海を抑えれば、情報を抑えことができる。
なぜ他国を侵略するのか?
・領土というのは、ぼーっとしていたら取られるというのが世界の常識。
・本人は自分を守るためだけにやるつもりでも、周りの国からは攻撃的で危険なやつだと見られるようになる。ロシアがクリミア半島を奪ったり、中国が南シナ海の島々を取ろうとしたりしている動きには、こういう心理が働いている。
・昔の中国の言葉で『遠交近攻』という言葉がある。遠くと交わって仲良くした上で近くを攻める、ひいては攻められないように準備するという意味。日本がアメリカと同盟を組んで、中国に対する立場を強めようとするのも遠交近攻の一環。
・結局のところ、国の地理的な位置がその国の外交の立場を決める。
アフリカはなぜ貧しいままなのか?
・資源がないわけではなく、輸出も盛んでありながらアフリカが貧しいままである最大の理由、それは国のお金を、政治家が海外に流しているから。
・チョコレートを売りたいヨーロッパやアメリカの国々が、自分たちはやりたくないカカオ豆作りを、アフリカに事実上押し付けている。貧しい国だから儲からない仕事を担わされて、そのために貧しいままでい続けるという悪循環が起こっている。
・ヨーロッパやアメリカのリーダーたちは「アフリカの貧しさは厳しい自然のせいだ。天災だ」ということにしたい。貧しさは誰の責任でもないということにしたい。
・一方で、多民族国家のアフリカでは民族や部族間の争いが多く、選挙を行っても国内は安定せず、発展しにくい。
↓ちなみに…
シンガポールは、多民族でも豊かになっためずらしい小国。初代首相のリー・クワンユー氏は、民族間の差別を徹底的に排除し、「シンガポール人」という意識を人々に根付かせることに成功した。
↓したがって
アフリカも将来希望がないわけではない。
読了後の感想
本の構成が物語風になっていて、対話形式で話が進められることで内容が頭に入りやすいです。
そして、ロシアがウクライナに侵攻した理由や、台湾有事の背景も本質的な部分が理解できたような気がしました。もちろんそれぞれ事情は複雑で単純に一元化できないでしょうが、根本的な部分を知ることができただけで自分には収穫でした。
「アフリカがなぜ貧しいままなのか」というパートでは、それが実に簡略な文章で説明されていて、こういうことだったのか!と唸りながら読み進めていた自分がいます。私はいずれアフリカ大陸に渡って生涯を終えたいという希望があるので、そういう意味でも印象深い箇所でありました。
さらに、韓国がいまなお日本政府に謝罪や賠償を求めていることに対して、「昔のことをいつまで言うのだろう…」と個人的に感じており、それ関係のニュースを観るたびにモヤモヤしておりました。しかし、この本を読んだことで、多面的に物事を見る、内向きではなく外向きで考えることの重要さを痛感し、いつまでも過去にこだわる韓国の姿勢を一方的に非難するのは筋違いなのだと痛感しました。
『13歳からの地政学』まとめ
以上、簡単ではありますが『13歳からの地政学』のエッセンスをお伝えしてきました。再度以下のようにまとめておきます。
・海を制するモノが世界を制する。
・領土は、ボケっとしていたら取られるというのが世界の常識。
・当事者からすれば、軍事侵攻をさせるのは自国を守るため。
・国の位置が、その国の外交立場を決める。「遠交近攻」はよく使われる戦略。
・アフリカが貧しいままのは、お金を海外に流している政治家によるところが大きい。
・アメリカは世界一ラッキーな立地条件を有し、今後も覇権を握り続ける可能性が高い。
・大国は、他国の人のことが分からなくなり、自国の常識を押し付けてしまう。行き過ぎると、テロや戦争を引き起こしてしまうことがある。
・世界はごく少数の加害者の国々と、植民地化の経験のある被害者の国々の二つに分類できる。
・過去のネガティブな歴史というのは、多くのケースで今の社会問題の原因だと捉えられている。つまり「過去の話じゃないか」という批判は受け入れられない。
最後にひと言
読み進める中で、「情報というのは集めすぎると、それは持っていないことに近くなっていく。」というフレーズが目に留まり、そこでしばし考えこみました。
私自身、紙の本や電子書籍、そしてネットニュース、メルマガ、SNS上で拾ってくる情報等々、アレもこれもとインプットを欲張り、結局何も活用できないまま溜まっていくばかりです。自分のインプット処理が全然追いつておらず、どうしたものかと頭を抱える日々…。
しかしこのフレーズに出会って、結局のところ情報というのはたくさん集めても、分析して使えなければ持っていないのと同じであることを再認識したのでした。私の場合で言えば、集めようとしている情報量がそもそも現在のキャパを超えていて、なおかつアウトプットが全く足りない、ということなのでしょう。
本の最後に、非常に考えさせられる問いがなされます。そこは敢えて伏せておきますので、ご自身で本書を手に取り、あなたなりの答えを出してください。
あ、本書を読む際はできれば地球儀、または地図帳を傍に置くのをお忘れなく!理解が深まること、間違いなしです(キッパリ)。
田中孝幸さん、素晴らしい本をありがとうございました☆